二恨坊の火は、大阪府茨木市の旧二階堂村に現れた人面の怪火です。無実の罪で殺された山伏・日光坊の怨念や、古典に残る異説を紹介します。

二恨坊の火(にこんぼうのひ)
概要
二恨坊の火は、摂津国高槻庄二階堂村、現在の大阪府茨木市に現れた、人の顔を持つ怪火です。
三月ごろから六月または七月ごろまで、特に小雨の降る夜に出現したと伝えられています。火の大きさは一尺、約三十センチメートルで、民家の棟や木の枝にとまりました。
恐ろしげな姿ですが、普段は人へ危害を加えません。そのため、村人たちはあまり恐れていなかったといいます。
姿
- 遠くから見ると、宙を漂う普通の火の玉のようです。
- しかし近くで見ると、炎の中に目、鼻、口があり、人間の顔のように見えました。水木しげるの妖怪画では、丸い炎の中から人の顔が浮かび、民家の屋根付近を飛ぶ姿で描かれています。
- 古い文献の一つ『朝野雑載』では、火の中に僧侶の首があり、息を吐くたびに炎が出たとも記されています。日本民俗学会の研究論文では、こうした日光坊の火に関する近世資料が整理されています。
能力・習性
二恨坊の火には、次のような特徴があります。
- 春から夏にかけて出現する
- 小雨の夜に現れる
- 空中を火の玉となって飛ぶ
- 民家の棟や木の枝にとまる
- 近くで見ると人間の顔がある
- 通常は人に危害を加えない
ただし、その由来を語る物語では、山伏を殺した村長を怨念の火が取り殺しています。普段目撃される怪火は無害でも、誕生の背景には強い恨みがあると考えられていました。
代表的な伝承
- 昔、二階堂村に日光坊という山伏がいました。
- 日光坊は病気を治す祈祷に優れ、村長の妻が病気になった際にも加持祈祷を行って回復させました。ところが村長は、日光坊が自分の妻と密通していると疑い、彼を殺してしまいます。
- 病気を治した恩を忘れられたことと、無実の罪で殺されたこと。この二つの恨みが日光坊の妄執となり、夜ごと村長の家の棟へ現れる怪火になったとされます。やがて怪火は村長を取り殺し、「日光坊の火」が「二恨坊の火」と呼ばれるようになりました。
- 一方、元禄二年、1689年成立の『本朝故事因縁集』には異なる説明があります。こちらでは、生前に二つの恨みを抱いたため「二恨坊」と呼ばれた山伏が、死後に魔道へ落ち、その邪念の炎が怪火になったとされています。
- この二つは由来の異なる伝承であり、同じ出来事としてまとめることはできません。なお、近世資料では「仁光坊の火」「日光坊火」「二魂坊火」などの表記も確認できます。
各地のバリエーション
- なし
現代作品での登場
- 『妖怪学校の先生はじめました!』: 作中に登場。作品公式アカウントも、二恨坊の火がすでに登場していた妖怪であることを明記している。作品公式アカウントの紹介
リンク
- 『妖怪学校の先生はじめました!』に登場する妖怪達をまとめました
別名
- 日光坊の火
- 仁光坊の火
- 二魂坊の火
- 二恨坊火
関連妖怪
- 姥ヶ火: 大阪に伝わる、人の顔を思わせる姿の怪火。
- 宗源火: 僧侶の罪や死後の魂が炎となった京都の怪火。
- 油坊: 僧侶と灯明油の因縁から生じたとされる怪火。
- 遺念火: 死者が残した恨みや執念が火となって現れる怪異。
- 鬼火: 墓地や野外などを漂う正体不明の怪火の総称。
- 人魂: 死者の魂が火の玉となって飛ぶと考えられた怪異。
- 「火の怪異」を揃えました
妖怪検定ポイント
- 二恨坊の火は、摂津国高槻庄二階堂村に伝わる。
- 現在の伝承地は大阪府茨木市にあたる。
- 三月から六月または七月ごろの、小雨の夜に現れる。
- 大きさは約一尺で、炎の中に人間の顔がある。
- 民家の棟や木の枝にとまるが、通常は人へ危害を加えない。
- 山伏・日光坊が無実の罪で殺されたという由来譚がある。
- 『本朝故事因縁集』には、別の由来が記録されている。