死人憑きは、因幡国・岩美郡に伝わる死者の怪異。死んだはずの人が突然起き上がり、強い力で暴れ続けるという、死霊信仰と通夜の習俗に関わる妖怪です。

死人憑き(しびとつき)
概要
- 死人憑きは、死んだ人に何かが憑いたとされる怪異。
- 読みは「しびとつき」。
- 因幡国岩美郡、現在の鳥取県周辺に伝わる話として紹介される。
- 死んだはずの人が突然起き上がり、家の中で暴れ出す。
- 家族や周囲の人々は、死者に何者かが憑いたものと考えた。
- 死者の霊は祟りやすく、人に憑きやすいという古い信仰とも関係している。
- 妖怪というより、死体・死霊・憑き物・葬送儀礼が重なった怪異である。
姿
- 死んだばかりの人間の姿で現れる。
- 長く患って死んだ農民として語られる。
- 夏場の話では、時間がたつにつれて目や口から汁が流れ出たとされる。
- 幽霊のように透けた姿ではなく、肉体を持った死者として現れる。
能力・習性
- 死んだ後に突然立ち上がる。
- 座敷へ躍り出る。
- 生きている人間を上回るほどの強い力を見せる。
- 大の男でも引き回されるほど暴れる。
- 飲み食いをしながら眠らずに動き続ける。
- 山伏などによる祈祷でも、すぐには鎮まらない。
- 戸を閉められると外へは出られない。
- やがて動かなくなり、葬られる。
代表的な伝承
- 因幡国岩美郡で、長く病んで死んだ農民がいた。
- 家族が僧を待っていると、死んだはずの農民が突然起き上がった。
- 死人は座敷で暴れ、大の男たちでも取り押さえられないほどだった。
- 二、三日眠らず、飲み食いしながら暴れ続けた。
- 家族は「死人憑き」だと考え、山伏に祈祷を頼んだが鎮まらなかった。
- 家族が家を出て戸を閉めると、死人は外へ出られなかった。
- 翌日、家の中をのぞくと死人は倒れて動かなくなっており、村人たちは急いで葬った。
各地のバリエーション
- なし
現代作品での登場
- なし
※死んだ人間が動き出すという点では、現代のゾンビやアンデッドのイメージと比較されることがある。
ただし、死人憑きは西洋的なゾンビではなく、死霊信仰・憑き物・葬送儀礼に根ざした日本の怪異として分けて考えたい。
別名
- 死人憑
- 死人つき
- 死者憑き
関連妖怪
- 死霊
死者の霊そのもの。死人憑きは、死者に何かが憑く、または死者の霊が不穏に動き出す怪異として近い。
- 亡霊
死者の霊がこの世に現れる存在。死人憑きは肉体を持つ死者が動く点で異なるが、死者の怪異として関連する。
- 死人返り
死んだ者が一時的に生き返ったように見える怪異。死人憑きと同じく、死後の肉体が動く不気味さを持つ。
- 火車
葬儀の場から死体を奪うとされる妖怪。死人憑きと同じく、死者の肉体や葬送に関わる怪異である。
- 幽霊
死者が霊として現れる存在。死人憑きは幽霊のような霊体ではなく、死体そのものが動く点で対比できる。
妖怪検定ポイント
- 読みは「しびとつき」。
- 因幡国岩美郡、現在の鳥取県周辺の伝承として紹介される。
- 家族は、死者に何者かが憑いたものと考えた。
- 山伏による祈祷でも、すぐには鎮まらなかった。
- 死霊信仰、通夜、出棺後に茶碗を割る風習と関係づけて覚えるとよい。