
宮城県には、仙台城下の夜道に現れる妖怪、三陸沿岸の海の怪物、古い屋敷に棲む存在、耕作を避けられた怪異の田など、さまざまな妖怪・怪異が記録されています。
宮城県内に具体的な出現地・伝承地がある妖怪・怪異を紹介します。
- 1. タンコロリン(たんころりん)
- 2. 川獺(かわうそ)
- 3. 絡新婦(じょろうぐも)
- 4. 米とぎ婆(こめとぎばばあ)
- 5. 怨猫大天婆(おんびょうおおてんば)
- 6. 化け古下駄(ばけふるげた)
- 7. 海坊主(うみぼうず)
- 8. 疱瘡婆(ほうそうばばあ)
- 9. 病田(やみだ/やまいだ/やまえーだ)
- 宮城県の妖怪・怪異まとめ
1. タンコロリン(たんころりん)

タンコロリンは、実を採られずに残された古い柿の木が化けた妖怪です。大きな僧や入道のような姿で現れるとされ、熟した柿を無駄にしないよう戒める存在とも解釈されています。
主な出現地は仙台で、二十人町に結びつけて紹介されることがあります。「タンタンコロリン」という呼び名も広まっています。
2. 川獺(かわうそ)

川獺は、人や大入道などに化けて人を驚かせる動物妖怪です。実在するカワウソが夜の水辺で不気味に見えたことや、人に似た声を出すと考えられたことから、化ける力を持つ存在として語られるようになりました。
仙台市青葉区荒巻の伊勢堂山付近にあった唸り坂では、唸る岩を打つと巨大な入道が現れたといいます。伊達政宗が怪物の足元を撃つと岩へ戻り、後に同じ場所で脛に傷を負った子牛ほどの川獺が見つかったため、怪異の正体は川獺だったとされました。
3. 絡新婦(じょろうぐも)

絡新婦は、蜘蛛が美しい女性などに化けた妖怪です。男を誘惑して捕らえる話や、蜘蛛の糸を使って水中へ引き込もうとする話が各地に残っています。
宮城県では、仙台市を流れる広瀬川の賢淵に蜘蛛の怪異が伝わっています。蜘蛛が男の足へ何度も糸を掛け、男が糸を柳や切り株へ移すと、それを淵へ引き込みました。水中から「賢い、賢い」と声がしたことが、賢淵の名の由来になったともいわれています。
4. 米とぎ婆(こめとぎばばあ)

米とぎ婆は、夜の水辺で米を研ぐような音を立てる老婆姿の妖怪・怪異です。姿を見せず音だけを響かせる場合と、白髪の老婆として目撃される場合があります。
宮城県栗原市志波姫では、「化け物屋敷」と呼ばれた場所の近くから、夜になると「ザックザック」と米を研ぐような音が聞こえたといいます。白髪の老婆が米を研いでいたとも語られ、周辺には米とぎ婆に由来する地名が残ったとされます。
5. 怨猫大天婆(おんびょうおおてんば)

怨猫大天婆は、老女に成り代わったとされる巨大な猫の妖怪です。
宮城県気仙沼市では、ある家の老母が突然身軽になり、生ものを好み、猫のように踊るようになりました。やがて猫たちとともに灯油をなめる犬ほどの大きさの虎猫が目撃され、老母に成り代わっていたのは年老いた猫だったと明らかになったといいます。
その猫は松崎の猫淵から来たものとされ、後に猫石へ葬られました。
6. 化け古下駄(ばけふるげた)

化け古下駄は、使われなくなった古い下駄が化けた器物の妖怪です。古道具に魂が宿るという付喪神の考え方に通じています。
現在の塩竈市にあたる陸前寒風沢では、使い古された蓑・笠・太鼓・下駄などが夜中に動き回りました。その中にいた巨大な古下駄は「鼻が痛い」と訴えたといいます。下駄の鼻緒を通す部分を「鼻」と呼ぶことに掛けた、どこか滑稽な妖怪です。家の者が古道具を焼くと、怪異は収まりました。
7. 海坊主(うみぼうず)

海坊主は、海上や海辺に現れる巨大な怪異です。一般には黒い坊主頭のような姿で船の前に現れ、船を転覆させる危険な妖怪として知られています。
宮城県石巻市の網地島では、夏の夕方に浜を歩いていた男が、暗がりから滑りやすい手に袖をつかまれました。男は陸に揚げた舟につかまって耐えますが、舟ごと海へ引かれそうになります。人々が駆けつけると海坊主は袖を引き裂いて海へ落ち、男は逃げましたが、その後病みついて亡くなったといいます。
沖合で船を襲う一般的な海坊主とは異なり、宮城の海坊主は網地島の浜辺から人を直接海へ引こうとする点が特徴です。
8. 疱瘡婆(ほうそうばばあ)

疱瘡婆は、疱瘡の流行時に現れたとされる巨大な老婆姿の怪物です。名前は疱瘡神に似ていますが、病を司る神として祀られた存在ではありません。
宮城県七ヶ浜町では、文化年間の初めごろ、疱瘡で亡くなった人の墓が荒らされ、遺体が食べられる出来事が続きました。大きな足跡が残り、後には赤い顔と白髪を持つ、一丈を超える老婆のような怪物が岩の上に現れたといいます。
鉄砲で脅されて姿を消してから、怪物も疱瘡の流行も見られなくなったと伝えられています。墓を暴き、遺体を食べる妖怪であり、疱瘡神との混同には注意が必要です。
9. 病田(やみだ/やまいだ/やまえーだ)

病田は、ヤミダ・ヤマイダ・ヤマエーダなどと呼ばれる、耕作すると災いが起きると恐れられた田の怪異です。人や動物の姿を持つ妖怪ではなく、特定の土地そのものが怪異視されたものです。
宮城県南部のおよそ六十坪ほどの田で、耕す者に不幸や不可解な出来事が起きたため、手を付けず荒れたままにされたといいます。
宮城県の妖怪・怪異まとめ
宮城県には、植物が化けるタンコロリン、動物妖怪の川獺や怨猫大天婆、器物妖怪の化け古下駄、海の怪異である海坊主、場所そのものが恐れられた病田など、性質の異なる妖怪・怪異が出現します。
-
海坊主:網地島では浜から人を海へ引く
-
川獺:唸り坂では大入道に化ける
-
絡新婦:賢淵では美女への変化よりも、淵へ引く蜘蛛の糸が中心
全国に似た妖怪がいる場合でも、宮城では独自の物語へ変化していることが分かります。