夜道に現れ、見上げれば見上げるほど背が伸びる大入道の妖怪、見越し入道。
では、見越し入道は実際にどこまで大きくなれるのでしょうか。
目撃者が見越し入道の頭を目で追い続けるなら、その頭は目撃者の視線の先にあるはずです。
つまり、遠くから目撃するほど、同じ角度まで見上げたときの身長も大きくなります。
そこで今回は、目撃者と最初の見越し入道をともに身長170cmとし、夜道で3m先に突然現れた場合、10m先、100m先、1km先、さらに地平線ぎりぎりで遭遇した場合の身長を計算します。
- 今回の計算ルール
- 夜道で3m先に突然現れた場合|約174m
- 10m先なら約575m|スカイツリー級
- 100m先なら約5.74km|富士山を超える
- 1km先なら約57.8km|中間圏まで到達
- 地平線までの距離は約4.65km
- 170cmの頭だけが見える限界距離は約9.31km
- 仰角89.9度なら約3万2744km|見失う直前
- なぜ見越し入道に最大身長は存在しないのか
- ただし、現実には見えなくなる
- まとめ|見越し入道は理論上、無限に大きくなれる
今回の計算ルール
計算を分かりやすくするため、次のように条件をそろえます。
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目撃者と最初の見越し入道は、ともに身長170cm
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計算を簡略化するため、目撃者の目の高さも170cmとする
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見越し入道の足元は動かない
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目撃者は巨大化する頭を目で追い続ける
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山・建物・雲などの遮蔽物はない
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「真上すれすれ」は仰角89度とする
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地球を半径6,371kmの球とみなし、大気による光の屈折は考えない
難しい数式は省きますが、考え方は単純です。
見越し入道が遠くにいるほど、同じ角度まで見上げるためには、より高く伸びなければなりません。近距離では、仰角89度まで見上げたとき、目撃者の目から頭頂までの高さの差は目撃距離のおよそ57倍になります。そこに目の高さ170cmを加えたものが、見越し入道の身長です。距離が10倍になれば、身長もほぼ10倍になります。
数km先では地球の丸みも無視できないため、地球の平均半径を6,371kmとして補正しました。NASAが示す地球の平均半径に基づいています。
夜道で3m先に突然現れた場合|約174m
まずは夜の妖怪らしく、夜道で突然遭遇した場合を考えます。
夜道でばったり、3m先に見越し入道がいたらどうでしょうか?
3m先に立つ見越し入道を仰角89度まで見上げた場合、身長は約173.6m、四捨五入して約174mになります。
3m先でも超高層ビル級なので、すでに相当な大きさです。
ちなみに1m先にいたらなら約59mにとどまります。
つまり見越し入道は、遠くから見つけた場合ほど際限なく大きくなりやすい妖怪だといえます。

10m先なら約575m|スカイツリー級
ではもう少し離れたところで目撃してみましょう。
今度は10m先の夜道で見越し入道に遭遇した場合を考えます。
10m離れたところで目撃者が仰角89度まで頭を追った場合、身長は約574.7mになります。
東京スカイツリーの高さは634mなので、わずか10m先から見上げただけで、見越し入道はスカイツリーに迫る大きさになります。
最初は170cmだったことを考えると、数秒で約338倍まで巨大化したことになります。

100m先なら約5.74km|富士山を超える
さらに離れて100m先から仰角89度まで見上げると、身長は約5.74kmに達します
富士山の標高3,776mを大きく超えます。街の反対側に立っている見越し入道を見つけて頭を追っただけで、山より高い妖怪が完成する計算です。
1km先なら約57.8km|中間圏まで到達
昔の人は目が良かったと聞きます。
1km先にいる見越し入道を目撃することもできることでしょう。
1km先の場合、地球の丸みを補正した身長は約57.8kmです。
NASAの大気区分では、高度約50~80kmは中間圏。見越し入道の頭は成層圏を突き抜け、流星の多くが燃え尽きる中間圏まで到達します。
この時点で「雲に届くほど大きくなる」という表現をはるかに超えています。
天気の良い日に遭遇すれば、きっと見えます。

地平線までの距離は約4.65km
さらに遠くで目撃してみましょう。
地平線の先に見越し入道がいたらどうでしょうか?

身長170cmの目撃者が、海や広い平地で地面を見渡した場合、幾何学上の地平線までは約4.65kmです。
見越し入道の足元がちょうど地平線にある状態で仰角89度まで見上げると、地球の丸みを補正した身長は約278kmになります。
すでに大気圏のかなり上まで伸びた、人工衛星級の見越し入道です。
170cmの頭だけが見える限界距離は約9.31km
では地球上で、見越し入道が見えるぎりぎりの距離はどれくらいでしょうか?
地平線で姿が隠れてしまわない、ギリギリのところで見越し入道を見てみましょう。
最初の見越し入道も身長170cmあります。
目撃者の目から地平線までが約4.65km。見越し入道の頭から見た地平線までにも約4.65kmあります。
両者を足した約9.31km先では、目撃者の目と見越し入道の頭頂を結ぶ直線が、両者の中間で地球の表面に接します。
このとき見越し入道の身体は地球の丸みに隠れ、頭頂だけが地平線上に重なります。厳密には面として見えるわけではなく、頭頂の一点が視線に触れる状態です。わずかでも近ければ、頭の先が地平線上に現れます。

これが、大気の揺らぎや光の屈折を無視した場合の幾何学上の限界です。
要は「見越し入道を目撃した」といえる限界の距離です。
この「地平線から頭だけがのぞいた見越し入道」を仰角89度まで見上げると、身長は次のようになります。
約582km
国際宇宙ステーションは高度370~460kmを周回しているため、見越し入道の頭はISSの軌道よりも高い位置に達します。
地平線の向こうに頭を見つけた時点では170cm。それを見上げ続けると、宇宙ステーションを見下ろす全長582kmの大入道になるわけです。

仰角89.9度なら約3万2744km|見失う直前
ここまでの計算では、「真上すれすれ」を仰角89度としました。真上まで残り1度です。
しかし目線をさらに上げると、やがて目撃者の視線と、見越し入道が上へ伸びる方向が交わらなくなります。その瞬間、頭は視線から外れます。
平らな地面として考えるなら、その限界は仰角90度です。ただし地球の丸みを厳密に入れると、約9.31km先の見越し入道を視線上に置ける限界は、それよりわずかに手前の約89.916度になります。
約9.31km先の見越し入道を、その限界に近い仰角89.9度まで見上げると、身長は約582kmから一気に約3万2744kmへ跳ね上がります。
限界角へ近づくほど、ほんのわずかな角度の違いで必要な身長が桁違いに増えるためです。
なぜ見越し入道に最大身長は存在しないのか
目撃者が頭を追って限界角へ近づくほど、見越し入道は際限なく伸びる必要があります。
限界角よりわずかに低い角度なら、どれほど大きな身長でも計算上は成立します。そのため「ここが最大」という有限の身長を決めることはできません。
ただし、限界角そのものでは視線と見越し入道の伸びる方向が交わらなくなり、頭を見失います。
つまり、見越し入道が限界角で無限大の姿として見えるわけではありません。見失う直前まで、計算上の身長に有限の上限がないということです。
ただし、現実には見えなくなる
見越し入道を目撃して「さぁ大きくするぞ!」と張り切っても、現実には次のような問題が起こります。
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大気や霞で遠方の姿が見えなくなる
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雲に頭が隠れる
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夜間では輪郭を追えなくなる
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目撃者が真上を向き続けられない
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170cmの物体を約9km先から肉眼で見分けるのは極めて難しい
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数百kmの身体は地球の重力や構造上成立しない
それでも、見越し入道は現実の生物ではなく、見上げる者の恐怖に応じて巨大化する妖怪です。物理法則を無視できるなら、限界を決めるのは見越し入道ではなく、目撃者がどこまで見上げ続けられるかということになります。
まとめ|見越し入道は理論上、無限に大きくなれる
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3m先・仰角89度:約174m
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10m先・仰角89度:約575m
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100m先・仰角89度:約5.74km
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1km先・仰角89度:約57.8km
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約4.65km先・仰角89度:約278km
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約9.31km先・仰角89度:約582km
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約9.31km先・仰角89.9度:約3万2744km
ただし、約582kmも約3万2744kmも、設定した距離と角度から得られた一例にすぎません。
見越し入道の最大身長は何mなのか。
その答えは、「有限の最大身長は決められない」です。