時なしは、江戸の本所入江町で時刻を知らせる鐘が正しく鳴らなかった怪異。送り拍子木との違いや異説を紹介します。

時なし(ときなし)
概要
時なしは、江戸の本所入江町に伝わる怪異です。「入江町の時なし」とも呼ばれ、本所七不思議の一つに数えられます。
現在の墨田区公式解説では、入江町にあった時の鐘が間違った時刻に鳴ることが多く、あてにならなかったことから、不思議として語られたと説明されています。舞台は現在の東京都墨田区緑四丁目周辺です。
一方、大正時代に記録された異説では、入江町では拍子木を打つと怪異が起こるため、夜回りが拍子木を打たなかったとされています。
時なしは姿を持つ妖怪ではなく、時刻を知らせるはずの音が役割を果たさなくなる、都市生活の怪異です。
姿
- 決まった姿はない。
- 妖怪や幽霊が目撃されるわけではない。
- 時の鐘や拍子木など、音を出す道具を通じて怪異が起こる。
- 音だけが現れたり、本来鳴るべき音が鳴らなかったりする。
能力・習性
- 正しい時刻とは異なる時間に鐘を鳴らす。
- 時刻を知らせる鐘をあてにならなくする。
- 異説では、拍子木を打つと怪異を起こす。
- 夜回りに拍子木を打たせなくする。
- 町の人々の時間感覚を混乱させる。
- 姿を現さず、音の異常として存在する。
代表的な伝承
時の鐘が当てにならなかったという伝承
本所入江町には、町の人々へ時刻を知らせる時の鐘がありました。
- 決まった時刻に鳴るはずの鐘が、違う時間に鳴ることがあった。
- 鐘の間違いがたびたび起きた。
- 町の人々は、鐘の音を聞いても正しい時刻を判断できなかった。
- あてにならない時の鐘が「入江町の時なし」と呼ばれた。
- やがて本所七不思議の一つに数えられるようになった。
これは現在、墨田区が紹介している代表的な説明です。
拍子木を打てなかったという異説
大正5年(1916年)に発表された山中共古の記録では、少し異なる話が紹介されています。
- 入江町では夜回りの拍子木を打たなかった。
- 拍子木を打つと、何らかの怪異が起きると恐れられていた。
- そのため、ほかの町のように拍子木で時刻や火の用心を知らせることができなかった。
この記録では、「時なし」という名称そのものは要約中に示されていませんが、後年の「入江町の時なし」へつながる伝承の一つと考えられます。
また、大正9年(1920年)の記録には、本所七不思議の一つとして「入江町の時なし」が列挙されています。ただし、そこでは怪異の詳しい内容までは説明されていません。
各地のバリエーション
- なし
現代作品での登場
- なし
別名
- 入江町の時なし
関連妖怪
- 送り拍子木(おくりひょうしぎ)
夜回りが拍子木を打つと、背後から同じ音がついてくる本所七不思議。時なしとは異なり、正体不明の音に追跡される怪異である。
- 津軽の太鼓(つがるのたいこ)
津軽家の屋敷で、火事の合図に板木ではなく太鼓が用いられたことを不思議とした本所七不思議。時報や警報の音にまつわる点で近い。
- 狸囃子(たぬきばやし)
夜になると、どこからともなく太鼓や笛の音が聞こえる怪異。音の発生源が分からない点で共通する。
- 送り提灯(おくりちょうちん)
夜道を歩く人の前後に提灯の火が現れ、近づくと別の場所へ移る本所七不思議。人の感覚を惑わせる点で近い。
- 燈無蕎麦(あかりなしそば)
夜の蕎麦屋台を舞台とする本所七不思議。時なしと同じく、江戸の都市生活に身近な設備から生まれた怪異である。
- 本所七不思議をまとめました
妖怪検定ポイント
- 読みはときなし。
- 「入江町の時なし」とも呼ばれる。
- 江戸の本所、現在の東京都墨田区緑四丁目周辺に伝わる。
- 本所七不思議の一つに数えられる。
- 墨田区の公式解説では、時の鐘が間違った時刻に鳴る怪異。
- 鐘の間違いが多く、時刻を知る目安としてあてにならなかった。
- 異説では、拍子木を打つと怪異が起きるため、入江町では拍子木を打たなかった。
- 姿を持つ妖怪ではなく、時刻と音にまつわる怪異。
- 送り拍子木とは別の伝承。
- 時なしは「時報の異常」、送り拍子木は「背後からついてくる音」が中心。