毛倡妓は、長い髪で顔や体を覆った遊女姿の妖怪です。
読み方は「けじょうろう」。江戸時代の絵師・鳥山石燕が『今昔画図続百鬼』に描いた姿で知られ、「毛女郎」とも呼ばれます。
顔が髪に隠れているのか、初めから顔がないのかは明確ではなく、その正体の分からなさが不気味さの中心です。

毛倡妓(けじょうろう)
概要
- 毛倡妓は、全身を長い髪で覆った遊女姿の妖怪です。
- 地域に伝わる具体的な目撃談よりも、鳥山石燕の妖怪画や江戸時代の版本を通じて知られるようになりました。
- 「倡妓」とは遊女を意味する言葉です。「毛」と「倡妓」を組み合わせ、髪や毛に覆われた女郎を表す名前になっています。
- 遊廓の女性を風刺した妖怪と見る説もありますが、石燕自身が由来を明確に説明しているわけではありません。
姿
長い黒髪を垂らした、着物姿の女性として描かれます。
髪は頭だけでなく顔や上半身まで覆い、目・鼻・口は見えません。石燕の絵でも、女性の顔は大量の髪に隠されています。
後ろから見れば普通の女性にも見えますが、正面へ回っても顔が現れない点が特徴です。
髪の下に顔があるという解釈のほか、のっぺらぼうのように、もともと顔を持たない妖怪とする見方もあります。
能力・習性
- 後ろ姿で人を惑わす
毛倡妓は、後ろ姿だけでは普通の女性や知り合いのように見えます。
相手が声をかけたり、顔を確かめようと近づいたりすると、髪に覆われた異様な姿が明らかになります。
- 顔を見せない
毛倡妓の最大の特徴は、長い髪によって顔が見えないことです。
髪を武器として人を襲う、命を奪うといった能力は、鳥山石燕の図像や説明からは確認できません。
相手の思い込みを裏切り、不気味な姿で驚かせる妖怪と考えるのがよいでしょう。
代表的な伝承
-
鳥山石燕『今昔画図続百鬼』
毛倡妓は、安永8年(1779年)刊行の鳥山石燕『今昔画図続百鬼』に描かれています。収録妖怪の一覧でも、青女房の次、骨女の前に配置されています。
石燕の説明は、次のような内容です。
- 男が、見覚えのある女性らしい後ろ姿を見つける
- 男は女性の顔を見ようと近づく
- 正面へ回ると、顔まで毛に覆われた毛倡妓だった
長い物語を持つ妖怪ではなく、見慣れた女性だと思って近づいた瞬間に、異形へ反転する場面が描かれています。
各地のバリエーション
- なし
現代作品での登場
- 『化け絵 石燕妖怪噺』
鳥山石燕を題材にしたモコの漫画。第10話の題名が「毛倡妓」で、石燕妖怪として毛倡妓を主題に扱っています。
別名
-
毛女郎(けじょうろう)
「毛倡妓」と「毛女郎」は、基本的に同じ妖怪を指す表記です。辞書でも、髪の長い遊女姿で遊廓をさまよう妖怪と説明されています。
関連妖怪
- 青女房
『今昔画図続百鬼』で毛倡妓の直前に描かれる女妖怪。どちらも在地伝承より、石燕の妖怪画に強く結び付く存在です。
- お歯黒べったり
女性の姿で現れ、顔の異様さによって人を驚かせる怪異。毛倡妓とは別物ですが、「顔を見た瞬間に恐怖へ転じる」という演出が近い妖怪です。
- のっぺらぼう
顔が見えない、または顔がない存在として解釈される点で近い妖怪。毛倡妓そのものがのっぺらぼうの一種というわけではありません。
- 江戸・東京に現れる妖怪たちをそろえています
妖怪検定ポイント
- 読みは「けじょうろう」
- 長い髪で顔や体を覆った遊女姿の妖怪
- 鳥山石燕『今昔画図続百鬼』に描かれている
- 別名は「毛女郎」
- 後ろ姿を知人と思って近づいた男を驚かせる
- 明確な攻撃能力は確認されていない
- 地域伝承より、江戸時代の妖怪画を中心に知られる
- 顔が髪に隠れているのか、顔自体がないのかは明確ではない