応声虫は、腹にできた口が本人の言葉に応じて話し、飲食するという妖怪病。元禄期の京都で語られた、体内から角のある虫が出た怪異譚を解説します。

応声虫(おうせいちゅう)
概要
応声虫は、人の体内に潜み、宿主の言葉に応じて声を返すとされる虫の怪異です。
『決定版 日本妖怪大全』では、元禄16年(1703年)の京都で起きた奇病として紹介されています。病人の腹部には人間の口のような出来物が生まれ、本人が話すと同じように声を出し、食べ物まで口にするようになりました。
応声虫は、単なる怪物ではなく、病気・寄生虫・人体の異変への恐怖が重なった妖怪病です。人面瘡や二口女と同じく、人体の一部が別の意思を持つように見える怪異として整理できます。
姿
- 腹部に生じる、不気味な腫れ物や出来物。
- 傷口が裂け、人間の口のような形になる。
- 正体の虫は、長さ一尺一寸ほど、約23センチとされる。
- 虫は頭に一本の角を持ち、トカゲに似た姿だったという。
- 目立つのは虫そのものより、腹に突然現れる「もう一つの口」である。
能力・習性
- 宿主が話すと、腹の口も応じるように声を出す。
- 腹の口は飯などを食べ、口に入るものを欲しがる。
- 食べ物を控えると、宿主に高熱が出たり、腹の口がわめいたりする。
- 特定の薬を嫌がる性質があり、それを利用して退治された。
- 人を外から襲うのではなく、体内から病人を苦しめる怪異である。
代表的な伝承
- 元禄16年、京都の屏風屋・七左衛門の息子、長二郎が高熱を出した。
- 腹部に人間の口のような出来物ができ、本人が話すと腹の口も話した。
- 腹の口は食べ物を求め、食事を減らすと大声でわめいたという。
- 名医・菅玄際は、この病を応声虫によるものと診断した。
- 腹の口が嫌がる薬を調べ、五、六種類を調合して飲ませた。
- 数日後、病人の肛門から一本角のあるトカゲのような虫が出てきた。
- 虫を打ち殺すと、長二郎は数か月後に元気を取り戻したとされる。
各地のバリエーション
なし
現代作品での登場
- 『ど根性ガエル』
主人公・ひろしのシャツに、カエルのピョン吉が張り付き、会話するギャグ漫画・アニメ。応声虫の直接的なモチーフとは確認できないが、人の体や衣服に別の意思を持つ「口」やキャラクターが現れ、本人と会話するという発想は、腹部の口が話し出す応声虫を思わせる。
リンク
別名
- なし
関連妖怪
- 人面瘡
腫れ物が人の顔になる妖怪病。応声虫は腹の「口」が中心である点が異なる。
- 二口女
後頭部に第二の口を持つ女の怪異。体の一部が独自に飲食を求める点で近い。
- 疱瘡神
疱瘡をもたらす疫病神。応声虫が体内の怪異なら、疱瘡神は病を人格化した存在である。
- 疫病神
病や災いをもたらす神。応声虫とは異なるが、病気への恐怖を怪異として捉える点で関連する。
妖怪検定ポイント
- 読みは「おうせいちゅう」。
- 元禄16年の京都に伝わる妖怪病。
- 腹にできた口が、本人の言葉に応じて話す。
- 腹の口は飲食もする。
- 菅玄際が薬への反応から正体を見抜いた。
- 一本角のあるトカゲ状の虫が体内から出たとされる。